歌ってみたを録るコツ その1 #blog1573
歌ってみたを録りたい!録った!
でもなんか微妙に納得いかない!
そんな時に役立つ(かもしれない)コツをちまちま書いてみるシリーズです。
ごく基本のことよりも、ミックス以降のことまで踏まえた少し深い部分にスポットライトを当てていきます。
DAWはReaper最新版/日本語化パッチ(森)/Default 4.0テーマ/MacOSを前提に解説していきますが、他のDAWでも同様のことが可能です。
栄えある第1弾は、
「前準備」について。
好きな曲を見つけた。歌ってみたに挑戦したくなった。練習もした。
さて、録音しよう!
…の前に、ちょっとやっておくといいことをいくつかご紹介します。
・テンポを測定しよう
録音する時、一般的な現場ではクリックと呼ばれるメトロノームの音を聞きながら行います。
楽曲の正確なテンポを確実に体に流し込むのはもちろん、テンポに正確に同期された演奏は後からの編集の難度がぐっと下がり、メリットが非常に大きいためです。
歌ってみたではそこまで重要ではないかもしれませんが、「4小節前から再生を始めて、録音を開始する」といった、時間に関する具体的な操作も可能になってきます。
クリックが存在することで、「ドラムの音がなくリズムが取りづらい落ちサビ」みたいなシチュエーションでも正確にリズムが取れますし、結果的に自信のある歌唱も可能になるでしょう。
とはいえ、(ボーカロイド曲では一部の方が「BPM ○○」と書いてくれていますが)ほとんどの場合でテンポは記載されていません。
このままじゃクリックが聞けないので、測定しておきましょう。
自分の場合はiPhoneアプリのTap The Beat Freeを使用しています。
DAW上でタップテンポ(拍に合わせてクリックすることで、テンポを自動的に設定してくれる機能)でもいいんですが、Reaperの場合それやると再生位置が変わっちゃって音楽を再生したままにできないんですよね。

下部のスペースキーみたいなボタンをタップすることでテンポが測定できる
このアプリの好きなところ、音符のms(ミリ秒)が表示されるんですよね。使わない方も多いと思いますが、地味便利機能です。
これでおおよそのテンポのあたりを付けたら、実際にReaper上でテンポを入力して、クリックを再生しながら「正解のテンポかどうか」確認していきます。

予め波形を 右クリック→アイテム設定→時間基準を時間に変更 しておきます。デフォルトだとテンポに合わせて波形が伸縮してしまうので、それを防止しましょう。
今回は拙作「タラチオゲーム メタルアレンジ」のオフボーカルを使っていきます。
Tap The Beatで測定したところ、ざっくり228前後だったので一旦228と入力します。

再生コントローラ上の「プロジェクトの始まりに移動」か、キーボードのHomeキーを押した後Shift+Cでテンポ/拍子編集画面が開きます。
OKを押して、グリッド(編集画面の縦線)が波形に合っていそうかざっくり見てみましょう。

なんだか右に行くにつれてグリッドが波形の飛び出た部分に対して右側にズレていってる気がします。テンポの正解がもっと速い例ですね。
一応音でも確認しておきましょう。画面左上のメトロノームマークをクリックします。

2*7に並んだアイコンの右上。ちなみに右クリックするとクリックの音や音量も選べます。
聴いてみた感じ、やっぱり曲に対してクリックが遅れているようです。そのため、波形左上のテンポ表示(228)をダブルクリックしてテンポ編集画面を開き、テンポを232にしてみます。

今度はどうやら左側にズレていってるようです。これはテンポの正解がもっと遅い例です。
音で聴いてもクリックが早いようです。
次は間をとって230で行ってみましょう。

あっ!これめっちゃ合ってません!?正解かな?実際にクリックも聴いてみましょう。
正解のようです!この曲のテンポは230と判明しました(なんでこんな速い曲サンプルに使ったんだろう…)。
曲中にテンポが変わる場合は、テンポの変わる場所で同じ工程を繰り返していきます。
また、配布されているオケによっては曲頭を削ってあってグリッドに合わない場合もあるので、波形をズラしながら合うテンポ/場所を探していきます。
(注: オケを配布されている状態から動かした場合、必ずVo素材と一緒に書き出しましょう!)
ちょっと面倒ではありますが、次に紹介する準備のためにも必ずやっていきましょう。
・曲の耳コピをしよう
「耳コピっつっても、歌はもう歌えるわけだし…」と思う人も多いと思います。
しかし、多くの人がそのメロディを音符として認識することができていません。
ものすごく前提の話にはなってきますが、音楽の三要素と呼ばれるものが存在します。
1. メロディ(旋律)
2. ハーモニー(和声)
3. リズム(拍子)
これらが正確に表現できるかどうかというのは置いておいて、きちんと認識する(≒音符で表現できる)ということは音楽に触れる上で必須です。
音楽というそのものを構成する大前提なわけですからね。
もちろん、楽譜を読めるようになれ!ということではありません。
もっとわかりやすい、DAWについているピアノロールを使います。

こんなやつ。
うわ!!!!めんどくさ!!!!!
って思った人も多いと思います。しょうがないです。知らないとマジで意味不明な画面です。
しかし、これからやる作業は「あなたが認識したメロディを言語化する作業」です。
歌を歌おうと思ってメロディを覚えた、それさえできるならすべての人が必ずできるようになります。
慣れるまでは一苦労ですが、ちょっと頑張ってみてください。確実にあなたの歌はランクアップします。
ちなみにこの画面、上下が音高(メロディ)、左右が音の長さ(リズム)を表しています。
コレを使って、曲を聞きながらメロディを打ち込んでいきます。
まずは、Reaper上で「Command+T」(Windowsの場合はCtrl+T)をし、新規トラックを作ります。

空のトラックができました。次は、波形部分で「Command+ドラッグ」(Windowsの場合はCtrl+ドラッグ)をして、空のMIDIアイテムを作ります。

曲の長さより少し長めに作っておきましょう。作った後はアイテムを左にドラッグして頭をくっつけて下さい。
トラックに名前をつけておきましょう。今回はメロディを打ち込みたいので、「melody」としておきます。

画面下部のミキサー画面、「FX」とか「I/O」の下の四角にトラック名が入力できます。
次に音を鳴らすためのVSTi音源を立ち上げます。melodyトラックの「FX」をクリックし、「追加」をクリックし出た画面下部「フィルタ」に「ReaSynth」と入力します。

左側が「全プラグイン」または「VSTi」を選択してないとReaSynthは表示されないので注意
選択し「OK」します。

ReaSynthが立ち上がりました!
一旦この画面は閉じてOKです。
次に、先程作成したMIDIアイテムをダブルクリックし、ピアノロール画面を開きます。

試しに、左側の鍵盤部分をクリック長押ししてみてください。音が鳴ります!
音量の大小は歌を録った時同様、フェーダーで操作できます。
ピアノロール画面上部の磁石アイコン(グリッドにスナップ)がオンになっていること、下部の「グリッド」が「1/16」「通常」になっていることを確認してから、画面上でドラッグをすると音符が作成されます。
音符の長さの調整は音符の左右部分をドラッグ。高さの調整は音符の中心部分をドラッグです。
もし「もっと細かい音符が必要なようだ」と思ったら、下部「グリッド」の値を「1/16」から「1/32」にしたり、もしくは三連符が必要なら「通常」を「三連符」にして下さい。

さて、ここからは操作の慣れと気合です。曲のメロディ、ハモリを打ち込んでいきましょう。
マジで歌が確実に上手くなるので、信じて頑張ってみて下さい(としか言えないのがちょっと辛いですが…)。

「タラチオゲーム」のサビのメロディ
さて、これが完成した画面です。音の高さ、長さが一目瞭然ですよね。
正確な音の高さやリズムがどこなのか、どこで声を切ればいいのか、苦労して自分で打ち込んだぶん、確実に理解できるようになったと思います。
回数を重ねていくにつれて、この作業が段々と自分の感覚とリンクしてきます。
「歌を歌う」という中に、「音符を再現する」感覚ができてきたらそれが正解です。
歌以外に楽器の演奏でも活かせる、音楽をやる上で必須のスキルが身につきました。おめでとうございます!
この打ち込んだデータ、ミックスをする時にも使える大変優秀なデータです。私に限らず、エンジニアにミックスをお願いする時「ファイル→MIDI ファイルの書き出し…」でデータを書き出して渡してあげてください。マジで喜びます。ない時って自分でコレ打ち込む必要のある場合があるんです。
ちなみに、私の場合は正確なデータを同梱いただいた場合音程補正が30%オフになります。
耳コピがちょっと時間かかっちゃって、だけどはやく上げたい曲がある!って場合には採譜サービスでカンペキなデータを代理で打ち込むこともしてたりするので、慣れるまではそれを使うのもアリかもしれませんね。
第1弾、想定よりだいぶ長くなってしまいましたがいかがでしたでしょうか。
第2弾がいつになるかは未定ですが、またふとした時に書くかもしれません。
「マイクはコレを選べ!」とか、「エアコンは実はつけててもOK!?」とか書きたいですね。