top of page

歌ってみたを録るコツ その3 #blog1573

歌ってみたを録りたい!録った!

でもなんか微妙に納得いかない!

そんな時に役立つ(かもしれない)コツをちまちま書いてみるシリーズです。

ごく基本のことよりも、ミックス以降のことまで踏まえた少し深い部分にスポットライトを当てていきます。

DAWはReaper最新版/日本語化パッチ(森)/Default 4.0テーマ/MacOSを前提に解説していきますが、他のDAWでも同様のことが可能です。

 

お久しぶりの第3弾は、

「これさえあれば大丈夫!な機材」について。

具体例を含めて紹介していきますが、これらの機材は必須ではありません

しかし、あなたが歌ってみたを自分のコンテンツのひとつとして位置づけているなら検討すべきです。

 

・なぜ機材にお金を使うべきか

いい機材は、あなたの歌の完成度の限界値を高めます

1日使うだけで10万超えのレコーディングスタジオは、そこら辺にぽんぽん置いてある機材が平気な顔して1台20万-30万、場合によっては数千万したりします。

それが積み重なってる光景の写真を見たことはきっとありますよね。

ボーカルレコーディングのド定番マイク、Neumann U-87Aiや、

その信号を増幅して他の機材で扱えるようにするマイクプリのNeve 1073

電気信号をデジタルに変換してPCで扱うためにAvid 192 i/o

その他にも電源トランスやスピーカー、部屋の設計や材質等色々ありますが、一旦省いておきましょう。

それらの超いい機材であっても、100%のあなたの歌を録音できるわけではありません

部屋の反響や電源ノイズを減らし、声がよりよく聞こえるようエンジニアが様々な機材をセレクトし、やっと結果99%ぐらいのものが録音できています。

「とりあえず録音できればいいか、よく分からないし」「よし、歌えた!楽しかった!動画上げよう!」

大変結構です。私も(歌ではなく作曲ですが)そこからスタートしています。

しかし、それらの機材はあなたの歌を5%ぐらいしか伝えられていません

せっかくこのブログを見てみようかな、つこという人間に歌ってみたにしてはほどほどな金額を払おうかなと思うほどにクオリティに関心があるなら、あなたの歌の限界値、高めてみたくありませんか?

99%はさすがに諦めてほしいですが、限りある予算で自宅録音でも、70%は実現できます

 

・機材以上に重要なこと

いくら機材が良くても、あなたの歌そのものが20%のヘロヘロであれば限界値に届く前にボトルネックとなるでしょう。

今この1文書いた瞬間自分にグサグサ刺さってて死にそうになってますが、これは紛れもない事実です。

第1回で書いたピッチとリズム。

第2回の「ノイズに負けないほどでけー声」。

そして何より魂を込めて全力で歌うことが何よりのクオリティアップです。

 

・お勧めの比較的安価な機材たち

(注: 音に正解はなく、紹介基準はあくまで私の主観です。ここに載っていない機材でも素晴らしいものは沢山あります!)

①マイク

1万5000円弱

MXL製マイクは非常にコスパに優れている上、出音で人を選ばない癖の少なさ、ほどよく柔らかいハイと硬質なミッドでジャンルを選ばない、まさに歌ってみたにうってつけの機材です。

MXLのラージダイヤフラムの中でも最安価クラスのV67Gは、執筆現在税込¥13,500。しかもケースとメタルポップガード付き!

このポップガードと同じものを持っているんですが、布製と違って音のキレが良く、ウェットティッシュでサッと掃除できるのは衛生的にも気持ちがいい。

もしポップガードが不要なら「-HE」のついていないものを選べばより安価です(ただし、ケースが布製の簡単なもので日頃の保管に不向きだったり、ショックマウントがないのはマイナス点)。

少々音が歪みっぽいので100点とは言いづらいですが、もし今コンデンサマイクを持っておらず、予算が限られている中手っ取り早くクオリティを上げたいならまずこれを買うべきです。

3万円前後

「よれよれ」の通称で知られるAT4040は、クセがなくコスパのいいマイクとして知られています。

上記MXL V67Gよりも値段が高いぶん単純に音のランクも良く、人を選ばずに使える点と、ほどよい音の丸め方がミックス以降のコンプやEQのノリの良さを生み出す非常にいいマイクです。

ただし、そのクセの無さはある意味ガッツがないとも表現できて(これは最初に話題にしたU87Aiでも似たものを感じます。好みの問題)、ロックをガンガン歌っていくには将来的に物足りないかもしれません。

当然ポップスには最高ですし、スムーズな出音はエレクトロ系にも適しているでしょう。

大変優れたマイクですが一つ弱点があり、ショックマウントに装着した際かなり緩く、しかも付属ゴムの劣化が早い、というもの。

現在は改善されたというレビューもあるので昔の話かもしれませんが、念の為頭に入れておいてもいいでしょう。

4万5千円弱(サウンドハウスにて)

MXLのフラッグシップモデルであり、私の現在のエースマイクです。Voに限らず、アコギやカホン等、生楽器の録音のファーストチョイスとして素晴らしい働きをする最強コスパの真空管マイクです。

柔らかくも上まで突き抜ける、存在感のあるハイ。ほどよい歪み感でどっしり座ったミッド。強烈な存在感がありつつも飛び出さずよくまとまったローと、全帯域においてこの価格帯ではなかなか聴くことのできない音を出してくれます。

ローはボーカル録るなら関係なくない?と思いがちですし、当然ミックス時には必要に応じてカットするんですが、「そもそもあまりないローをトラブル防止のためにカットする」のと「ふくよかで心地いいローをミックスの中に収めるためにカットする」のでは雲泥の差です。

もしあなたがステップアップしたマイクを探しているなら、きっとGenesisは期待に応えてくれると思います。

V67Gと同じくポップガード付きで、こちらはXLR(キャノン)のシールドも付属しているのが嬉しい。

ただし、真空管機材にトラブルはつきもの。大事に扱うのが大前提です。

②オーディオインターフェース

1-3万円程度

安価なオーディオインターフェースを選ぶなら、まずこのシリーズを検討すべきでしょう。

マイクプリは必要十分に音楽的な響きで、ヘッドホンアンプの出音もそこそこイケてます。デモ制作程度のミックスなら余裕でできる性能があります。あと赤がかっこいい。

同価格帯のものを片っ端からチェックした時には、個人的な印象では完全にFocusrite1択でした。1-2万円台のものを買うなら絶対にFocusriteをお勧めします。

最安価のSolo G2は衝撃の1万円ですが、給電がUSB経由なのが個人的には気になるところ。トラブルになることはあまりないですが、48Vという電圧をマイクに送らなければならない以上、ノイズ発生源の代表格であるPCを経由した電源よりも壁コンセントから直接取った方が気持ち的にはいい気がします。そういう意味で6i6以上が個人的にはお勧め。

ちなみにマイク・ヘッドホンまでセットになったStudioシリーズは、まあ使えないことはないけど…ぐらいの感じです。結構ノイズの乗るマイクなので、あまりお勧めはしないでおきます。

4万円弱

しばらく前から自分の周りでコスパ最強と名高いIDシリーズは、やや固めながらScarlettと比べるとどっしりした腰のある音で収録できます。

これを聴いてからだと、Scarlettは細くハイ上がりに感じるかもしれません。

手に入りやすく、扱いやすく、値段も安価で出音も申し分なし。最初のオーディオインターフェースとしても十分視野に入れるべき良い機材です。

同価格帯にSPL製もあって個人的にはそちらの出音がかなり好みだったんですが、どうやら生産終了してしまった様子…。5万円強で比べた時にはSPL CrimsonかAudient ID22か、といった感じだったので、より買いやすい下位グレードのID14を載せておきます。

③マイクケーブル

2500円程度

安価かつ取り回しがよく、音は素直でクセがない、でも腰があってスピードが速いと、mogami製のケーブルは完全に私の相棒として活躍しています。

自分で使うケーブルははんだ付けで作っているので面倒くさくない2549を使うことが多いですが、2534の方がよりミッドの情報量が詰まっているように感じます。2549はハイの解像度がやや良い気がする。

思ったよりmogami製の既成品がすぐ出てこなかったのでAmazonで見つけたものを貼ってますが、これ以外のものを探す時には「プラグがneutrik製」ということを確認して買っておけば失敗しにくいと思います。

ただマイクケーブルはマイクやオーディオインターフェースに比べると圧倒的に音が変わらないので、「得体の知れない何かを使ってる」なら買ってください。ケーブルに「CANARE」とか「BELDEN」とか(それこそ「mogami」とか)書いてあったらわざわざ買う必要はありません。

もし買う際には、必要以上に長いと信号が変化しやすいと言われているので3m程度をお勧めしておきます(必要であれば7m程度までなら過剰に気にしなくていいと思います!)

④マイクスタンド

5000円程度

スタジオのド定番です。さすがに音には関係ないですが、1000円のものを使ってるーだとか、卓上スタンド使ってるみたいなことがあればこれに買い換えるとストレスが大幅に軽減されるでしょう。

もしMXL製のような重めのマイクを使うなら、より「スッと締まる」恩恵を受けられるかもしれません。

⑤リフレクションフィルタ

1万円前後から

ごめんなさい、リフレクションフィルタに関しては比べられるほど正確な比較をしたことがないので具体的な紹介は控えておきます(写真はmarantzのSOUND SHIELD)。

自宅録音の最大の敵は部屋の反響ですが、それを大幅に低減させることができる最高のアイテムです。費用対効果がかなり良いアイテムなので強くお勧めします。

選ぶ際の基準としては(上に行くほど重要)、

・スポンジ部が厚いこと

・大ぶりなこと

・トゲトゲとか波状がしっかりしてること

あたりを気にするとより効果の高いものが選べると思います。

薄手だったり小さいものは場合によってあってもなくても変わらなかったりするので、買うなら買うで多少思い切って予算を出しましょう。ヤケに安いものは改善があまりない可能性があります。

パッとサウンドハウスで見る限りだと1万前後以上のものは比較的しっかりしていそうです。

⑥ポップガード

布製は2000円前後から、金属製は5000円前後から

ポップガードは比較した上で割となんでもって感じです(写真は私も使ってるStedman Proscreen101)。選ぶ際の基準は

・布製

吹かれ防止効果が高い。少しハイが削れるが、裏を返せばハイがまとまるとも言えるので短所とは言えない。掃除が実質できないのでそこはデメリット。

・金属製

吹かれ防止効果が低い。その分ハイが削れず膜の取れたようなスッキリした音だが、人によってはハイがキツいことも。掃除がしやすいのは何よりのメリット。

って感じです。

グースネック(曲げて固定できるヤツ)は安価なものだと寿命が早いことがあるので、それだけ注意。

⑦(お好みで)デシケーター/防湿ボックス

コンデンサマイクは湿気に弱いことで知られています。もしあなたがちょっといいマイクを買って大事にしたいなら、防湿庫を用意するとマイクにも、精神衛生にも良いでしょう。

もし「コンセント繋げばあとはOK」にしたいなら私の使っているのがコレ

予算を抑えたいなら湿度計付きのボックス繰り返し使える除湿ユニットを入れるとか。

せっかくのマイクなんで、是非大事にしてあげて下さい。

 

・もしもっとこだわりたいなら

⑧ハードウェアのマイクプリ/コンプ/EQ

お好みで

アウトボードを購入しよう、という発想に至っただけでも、今までそこそこ経験を積まれてきたと思いますし、自分の音の好みもいくらか理解していると思います。

4-5万円程度のマイクプリでも面白い音が出るので(私はwarm audio TB12を2台使ってミックスに使ったりもしてます)、最悪売れるというハードウェアの利点を活かしていくらか手を出してみてもいいかもしれません。

一つ言えるのは、ミックスで使うソフトのコンプやEQは「後から加工してそうした」音になりますが、ハードウェアのそれは「あたかも最初からそうだった」ような音になります。

メジャー流通音源のボーカルがぶっといのはアウトボードコンプやEQでぶっとく録っているからに他なりません。是非勇気を出してトライしてみて下さい。

(もし一緒に選んでほしいということであればレッスンの枠を取ってもらえれば相談に乗れますよ!)

⑨吸音材

5000円から

部屋の壁に貼れる吸音材。マイクのある高さ近辺に貼るだけでも効果がありますし、もし押入れの一部を収録室とするなら壁一面に貼るのも効果的です。

吸音材は色々あるんですけど、コレは安価で効果もありつつ、スポンジメーカーなので「好きな大きさに加工して送ってくれる」っていうオプションがあります(有料)。これが面倒くさがりの自分にピッタリでリピーターになってます。

「こういう大きさで欲しいんですけど〜」ってメールを送ると、すっごく丁寧に対応してくれます。

吸音材を使わないまでも、厚手の布(フェルト等がベスト)で鏡やガラス、硬質な机、金属等を片っ端から覆うだけでも効果があるので、そこから始めてもいいでしょう。

⑩電源トランス

4万円程度

正直ホームページがあまりに怪しいと評判のProCableですが、売ってるものは悪くないものが多いようです。それを余りある怪しさだけど…。

ざっくり言うと電源ノイズの軽減と、115Vの供給が可能になります(前述のMXL Genesisは100Vでも問題なく動作するけど、本来は115V)。ただしPCと音響機材を一緒に繋ぐとノイズが出るので、音響機材専用にするのがお勧め。

マイクやオーディオインターフェースに比べてケーブルは変化が音の変化が少ないと書きましたが、それを大幅に上回る変化の少なさです。ただし、自宅でできる電源ノイズ対策の最後のひと押しに効果的なのは間違いないのを体感しているので、一応載せておきます。

少なくとも今日書いた機材では音の違いを実感できることはないと思います。

 

第3弾もありがとうございました。

「機材はよく分からないから安いものでとりあえず」という人に届いてほしい!

もし「こういうことについて知りたい!」というのがあればTwitterで連絡してもらえれば題材として検討しますので、是非お気軽にどうぞ!

特集記事
最新記事
アーカイブ
タグから検索
bottom of page