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歌ってみたを録るコツ その4 #blog1573

歌ってみたを録りたい!録った!

でもなんか微妙に納得いかない!

そんな時に役立つ(かもしれない)コツをちまちま書いてみるシリーズです。

ごく基本のことよりも、ミックス以降のことまで踏まえた少し深い部分にスポットライトを当てていきます。

DAWはReaper最新版/日本語化パッチ(森)/Default 4.0テーマ/MacOSを前提に解説していきますが、他のDAWでも同様のことが可能です。

 

このブログも第四回。今回のテーマは、

「トラック分け/重ね方のススメ」について。

スムーズな作業を可能にしてエンジニアの負荷を減らせば、当然そのリソースはクオリティに向きます。せっかく頑張って録音するんです。最高の作品に向けて制作を進めるべく、依頼先が私でなくとも喜ばれるいくつかのコツを知っておきましょう。

 

・トラック分けには作法がある

「左右に置く素材がある場合、左に置くトラックから若いナンバリングにする」

って一文、たいていの人は「えっ、そうなの?」と思うんじゃないでしょうか。

でもこれ、別にそうでなくても全然いいっちゃいいんですけど、エンジニアの間ではなぜか前提レベルで習慣づいていることのひとつです。

長く業界標準として使われるDAWのひとつであるProToolsでステレオ録音すると、例えばチャンネル1-2なら1が左、2が右に割り振られるのから来てるのかなーって勝手に思ってます。あとは左に振るものをDAWの並びでも左にした方が美しいので、たくさんのトラックを一度にインポートした時(名前順に並ぶ)勝手にそうなるようにかな。「なぜか」って書くぐらいには正確な由来を知りません。

話が早速脱線しましたが、上記のようにどう考えても初見殺しなルールが結構あります。イヤでしょ。

そして今回書くのは基本的につこにゃ式なので、他のエンジニアに迷惑がかかることは95%ないですが、人によってはワークフロー上別の作法が必要なこともあります。その場合は素直にエンジニアの言うことを聞きましょう

 

・わかった、ざっくりまとめて教えてくれ

もっと下に行くと具体例書いてあるんだけど、これ守っておけばだいたいの人に喜ばれるぞ

正直エンジニアによって作法違う部分も含まれているけどこれをしたことによって嫌がる奴は少ないぞ。

1. メインボーカルはサビとそれ以外で録音/トラック分けする

2. エフェクトをかけたいトラックはその種類ごとに録音/トラック分けする

3. パン(定位)を振りたいトラックはその定位ごとに録音/トラック分けする

4. ウィスパーやスクリーム、コーラス等他と違う発声や役割はその種類ごとに録音/トラック分けする

5. 「Main1」「Main2_Sabi」「Effect1_Lofi_and_Delay」のようにひと目見てそれが何なのかわかるようにトラック名をつける

6. ハモリはダブリング(同じものを2本録ること)する

7. 下ハモリと上ハモリでトラックは分ける

8. サビの厚みが欲しかったらサビのメインボーカルもダブリングする

9. ミックスの時にトラックをミュートするのは簡単だから、迷ったら重ねておく

10. まとめるのは簡単だけど分けるのは面倒だから、迷ったら分けておく

 

・理由を教えてくれ

1. メインボーカルはサビとそれ以外で録音/トラック分けする

サビってオケデカいじゃないですか。ボーカルも音量デカくしないといけないし、何なら広がり感も出したいことが多いので、ミックス時の処理を分けます。ので、最初からトラック分かれてると最高だし、なんなら分かれてないのを毎回手元で分けてます

2. エフェクトをかけたいトラックはその種類ごとに録音/トラック分けする

繋がって歌っている部分でエフェクトの切り替えをするとすげーブツッと切り替えた感が出るっていう大問題の回避が最大の理由です。エフェクトのかかる前/かけた後の部分に歌い終わり/歌い始めのニュアンスがあるだけで圧倒的に違和感が減ります。ぜひやってほしい

3. パン(定位)を振りたいトラックはその定位ごとに録音/トラック分けする

これは1.や2.ほどの重要性ではないんですが、1.同様どうせトラック手元で分けなきゃいけないから最初から分かれてたらいいなーって思います。少なくとも誰に送っても迷惑に思われることはありません。

4. ウィスパーやスクリーム、コーラス等他と違う発声や役割はその種類ごとに録音/トラック分けする

1.と理由はほぼ同じですね。全て処理が変わるので、最終的には必ずトラックをそのように分けるし、「hamo」って書いてあるトラックから波形を全部聞いてコーラスを救出するのに毎回ワンクッション手間がかかるので録音段階で分けてあるとマジで「あなた最高のクライアントだよ…」ってなります。

色々混ざっていると何が起こるかっていうと、こっちの手元でトラックを分ける時のミスで「ここの音が鳴っていないようなんですが…」と指摘されたことが数回あります。ミスは完全にこちらの問題なんですけど、2回や3回のミスで気をつけてても起こるレベルの話なので、たいした手間じゃない割に重大なリスク回避ができるのは悪い話ではないはずです。

5. 「Main1」「Main2_Sabi」「Effect1_Lofi_and_Delay」のようにひと目見てそれが何なのかわかるようにトラック名をつける

必須。ほとんどの人がやってくれてはいますが、「vocal1」「vocal2」だと一度聞いてから何の役割か判断しなきゃいけないので無駄な手間がかかるし、何よりそういう命名規則の人は1.-4.を知らないことが多いので、かなり地獄めいたトラック分けからスタートすることになります。当然ミスも出かねません。協力してね。

6. ハモリはダブリング(同じものを2本録ること)する

同じハモリを2本録ることで、エフェクトで強引に広げなくても左右にボーカルを配置できます。コレやるとマジで良いです

割と最近まで信じられなかったんですけど、聞き手ってどうもiPhoneのスピーカーで鳴らして作品聞くとか結構あるっぽいんですよ。

エフェクトで作った広がり感って、ヘッドホンで聞くとまあいいんですけど、モノラルや左右幅の少ないステレオで聞くとグチャグチャしたロボットボイスみたいになることがあります。あるいはヤケに目立ったり、もしくは(私の場合はないはずだけど)ハモリがまるまる消滅するなんてことも。超ざっくりした説明ですが、エフェクトは位相を狂わせて音像を広げているので、基本的にはヘッドホンでしか最良の結果が得られません。

きっちり2本録って左右に配置すればそんな問題は絶対に起きません。ヘッドホン上であってもサウンドクオリティの大幅な向上が見込めます。

広げる必要がなく中央に配置したい場合は1本ミュートすればいいだけなので、どちらの方がベターかわからない場合一旦2本録っておきましょう。もちろん「これは絶対に中央に1本で配置する」と決まっている場合はダブリングしなくて全然OKです。

7. 下ハモリと上ハモリでトラックは分ける

上ハモリって高い音なんで最悪メインより目立つことがあるんですよね。ので、音量的には下ハモリより小さく配置することがあります。もしくは発声次第ではその逆も。これも分かれてないとこっちで分けるシリーズ。ぜひ協力してほしいです。

8. サビの厚みが欲しかったらサビのメインボーカルもダブリングする

これは任意。ロック色の強い曲だとマッチすることがあって、マッチするとかなり強いです。厚みも広がり感も芯も出ます。物足りない時試しにトライしてみて!

9. ミックスの時にトラックをミュートするのは簡単だから、迷ったら重ねておく

「これもしかしたら2本あったほうがいいのかな…」って時、エンジニアに連絡して指示をもらうのもいいですが、インスピレーションの湧いているうちに録音済ませたくないですか?とりあえず録っておいて、「いらなかったらこのトラックはミュートしてください!」は全く問題ないし、むしろ選択肢が増えるので大歓迎です。体力を使うので絶対やれなんてことはないですが、いざって時に思い出してください。

10. まとめるのは簡単だけど分けるのは面倒だから、迷ったら分けておく

これはDAWの仕組み上なんですが、波形を1本にするのは簡単です。逆にトラックを分けるのは処理上問題ない然るべき場所を探してから波形を切って、ノイズにならないようフェードを書いて、っていうワンクッションが必要なので、1本にすべきか分けるべきか迷った時は一旦分けておいてください。知らないうちに該当していた1.-4.もカバーできることがありますしね。

「Aメロ」「Aメロ折返し」「Bメロ」「サビ」「Cメロ」みたいな分け方は大歓迎です。

 

・具体例

拙作「ショートスリープ」を例にしてみます。

いい感じのピアノエモだ!やったー!

(追記: 以下に何枚か画像を貼っているんですが、iPhoneから見るとなぜか強烈に縮小されてとても見れない感じになってます…原因がわかるまではPCからか、iOS版Chromeの「PC版サイトを見る」機能を使ってください)

まずVocalsの全体像はこんな感じ。

多分目眩がすると思うんですけど、なんでこんなにトラックが並んでいるのかには前述の通り理由があり、そしてそれぞれは波形で見ると実は登場頻度が少なく、パッと見ほど録音に苦労することはありません。

自分の曲なせいで命名規則が人に渡す用ほど丁寧じゃないのはマジでごめん。これパラデータ配布する時にはちゃんとします。

・メイン

main1が0:19-1:09、2:29-2:50に出るメインボーカル。

これはまあ普通です。

main2は3:21-3:23のサビ頭でノンリバーブにする時のトラック。

初っ端から変化球で申し訳ないんですけど、「エフェクトを切る」時に分けてあるとメッチャクチャ作業しやすいです。だいたいの場合はメインにかかってるリバーブはここだけ切れ、っていうシチュエーションになりそうですね。

・メイン(サビ)

sabi1は1:10-1:37、3:24-3:58のメインボーカル。

これ、オレンジ色のトラック(バストラック≒役割ごとにまとめるもの)を見てほしいんですけど、さっきの「MAIN」とこの「SABI」で1db音量上がってるんですよね。サビはオケがデカくなるので、ボーカルもそれに合わせて音量をデカくしてます。あと画像には写ってないですがサビの広がり感のためにエコーも追加してます。ので、私はメイン(サビ以外)とサビでトラックを必ず分けます。

・メイン(ダブリング)

sabi1Dはsabi1と同じタイミングで出現するサビのダブリング。

パンク系だと常套手段なんですけど、声の厚みが欲しい時にうっすらメインをダブリングします。ご覧の通り音量としてはマジで小さいです。ボカロのダブリングなのもあって分かりづらいかも。

サビにパンチが欲しい時試してみてください。

・ハモリ

harm1/harm1Dが下ハモ、Dはダブリング。

harm2/harm2Dが上ハモ、Dはダブリング。

ダブリングがあるのは前述の通りですね。ボカロなのでこの音源だと「もどき」だけど、生歌だと明らかに違います。

・エフェクト

LoFi1が0:00-0:05のローファイ、2:50-3:05のローファイ+リバーブ。

(目的上同じトラックでよかったのでそうしてるけど、人に渡すときはトラック分けてもいいと思います。)

Chorus1-002/Chorus1Dが1:16-1:21、3:27-3:32の「アー」コーラスの下、Dはダブリング。

Chorus2/Chorus2Dが同箇所の上、Dはダブリング。

ローファイのエフェクトを使いたかったのでトラックを分けます。ミックス的な話をするとリバーブのセンドもしたくないのでトラック分けが必要。

Chorusはコーラス用に「ハモリより目立つけどメインより一歩後ろ」の配置をしたかったのできちんとトラック分けをします。ダブリングはハモリと同じ理由。

・シンガロング

各サビのシンガロング。

「sabi」側は「つま先がいまも迷ってる」「ゆび先はいまも探してる」の曲中最高のテーマ。

ueがミクと同じ音域、それ以外はオクターブ下のよく聞こえる高さ。

「lastsabi」側は3:25-3:32の「小さなつむじが 隣にない明日が来る」の1サビとの差別化に入っている少しだけ小さい音量のやつ。

lastueがミクと同じ音域、それ以外はオクターブ下のよく聞こえる高さ。

タラチオさんからいただいたトラックなのでちょっと命名規則が違う上lastueに至っては左右逆だったりするんだけど、確かこれ規則通りに左右置くよりこっちの方が収まりが良かったとかそんな理由だったはず。配布時には直します…。

シンガロングは数勝負なのでひたすら録って、エンジニアに投げる前に自分で聞いてる段階で「これだ!」と思うまで重ねましょう。

interludeは2:55-3:10の「オーッオーッオー」。

SingAlongだけミク、他はタラチオさんです。命名規則のグチャグチャっぷりはタラチオさんが「フフ......へただなあ、つこにゃくん。へたっぴさ........!欲望の解放のさせ方がへた....。つこにゃくんが本当に欲しいのは...生声のシンガロング......!」と、当初サビのみで依頼していたのに急遽間奏にも入れてくれたためです。タラチオさんありがとう。

ここも数勝負ですが、サビと比べると低域が空いていて腰をすえた音にしたかったので、ミクと同じ音域の「o」だけでなくオクターブ下の「sita」も3本録ってもらいました。

 

・ね、簡単でしょ?

自分の曲ということで命名規則が全体的に手を抜いているのは正直良くない例だと思うんですが、それ以外については実例で解説できました。

…いや、簡単じゃねーよ!助けてくれ!って場合には採譜サービス(実質1000円!正直値上げすべきか迷ってる!)を利用してもらえればトラック分けを含めてガイドメロディを作成するので、それで実例の経験を積むのも手です。

 

第4弾もありがとうございました。

今回のは何年もやってきた経験で困ったことを最適化していく過程で自分の中に生まれていったものなんですが、他のエンジニア見てても多少の差はあれど結構同じ所に行き着いてるんですよね。

私宛の依頼でなくても、ぜひ参考にしてください!

もし「こういうことについて知りたい!」というのがあればTwitterマシュマロで連絡してもらえれば題材として検討しますので、是非お気軽にどうぞ!

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